この島の、どの辺りまで来たのだろう
気付いた時には、俺は小高い丘の上にある、展望台の頂上にいた
無心で歩いていたものだから、地理が読めない…
きっと真ん中あたりだろうと納得して、俺は眼下に広がる島の景色を眺めた
エメラルドグリーンの海と珊瑚礁に囲まれた、決して大きいとは言えない綺麗な島
小さいながらも活気のあふれる街が転々と、港を取り巻くように栄えている
きっと女性達は褐色の肌をした、太陽のように気高く明るい人ばかりだろう
そんな女生と結婚して、自分の店を開いて、いつしか子供が生まれて…
贅沢はできないだろうけれど、充実した時間、幸せな生活…
「ここに住みついちまうのも、いいかな。」
サンジは緩やかな潮風に髪をなびかせながら、走馬灯のように蘇る思い出を封印するように瞳を閉じた。
もう枯れてしまったと思っていた涙が、ゆっくりと頬を伝う。
夜から何も口にしていないので、体内の水分は使い切ったと思っていたのに…
その涙がまるで自分を慰めてくれているようで、サンジは少し口元を緩ませた。
「今、ココで泣いたって…もう誰も、慰めてくれねェのにな。」
自虐的に、独りごちる。
「全部俺が悪いのに、何で…涙なんか……」
船を降りた時から、決心はついていたのに
オールブルーの夢は諦めようって、今までのことは忘れようって
だのになぜ、これほどまでに虚しいのだろう
だのになぜ、心の底からあいつを…ゾロを欲してしまうのだろう
いつから俺は、こんなに女々しくなってしまったのだろう…
堪えていた嗚咽が、小刻みにサンジの肩を震わせる。
サンジは右手で口をおさえ、左手で右肩を抱きすくめると、急に力が抜けたようにその場でうずくまってしまった。
「おい!大丈夫か!?」
ゾロの声がする…サンジは涙でぼやける視界を、背後に向けた。
誰かがこちらに走ってくる…軽快なヒールの音で、その人物がゾロで無いことだけは分かった。
急に、激しい頭痛とめまいがサンジを襲う。
このまま死んでしまうのも良いかもしれないと、サンジは自分の背中を支える人物の腕の中で思った。
「大丈夫か!?」
ゾロと全く、同じ声…ここまで似ているのも珍しい
いつぞやもこうして、お前が抱きとめてくれたな
死ぬ間際には、好きな人しか見えないって言うけれども
今、俺を抱きとめている人がお前に見えるよ
おかしいな…
「ぞ、ろ…」
大粒の涙を一筋流して、サンジは意識を失った。
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